「給食会社の調理ってどうするのかな?」「どんな人が働いているんだろう?」
そんな疑問にお答えする当コーナー。浅田給食の本社にあるセントラルキッチンへ伺い、管理課長を務める中村さんにお話を伺いました!!


もっとおいしく、もっと食べやすく!
調理師の情熱がメディカル給食を進化させる。
さて、こちらが今回伺った浅田給食のメディカル給食を製造するセントラルキッチンです。介護施設を中心に、保育所や福祉施設の調理場で使用する惣菜を毎日1500食分つくっています。

「仕込み」「調理」「真空パック詰め」のポジションに分かれて、同時並行で作業を進めます。写真に写っている大釜は、ひとつで500食分を調理できるそうです。家庭用の鍋いくつ分になるのか想像もつきません。

完成した惣菜は、真空冷却器で100℃から20℃まで一気に冷やし、仕上げにブラストチラー(写真参照)と呼ばれる機械に入れて中心温度を3℃の状態まで下げます。衛生管理の中で重要な要素である冷却において、設備が充実しているのも浅田給食の強みです。


インタビュー
INTERVIEW
いよいよ中村さんへインタビュー!
仕事のことからプライベートの過ごし方までいろいろとお話を伺いました。

本日はよろしくお願いします。中村さんは、もともと給食会社で働いていらっしゃったのですか?
いえ、以前は日本料理店を営んでいて2006年に入社しました。飲食店勤務からの転職組は意外とたくさんいますね。

そうなんですね。料理をつくるという点では同じでも、やはり勝手が違うところがありそうな感じがしますが実際はどうでしたか?
たしかに、大量調理は飲食店での調理と別物なので、まずその部分に多くの方がおどろくと思います。それと、仕込みで食材をカットする際は包丁で通常よりも細かく刻むんです。そこも慣れるまでは結構大変でした。

なぜ細かく刻むのでしょうか?
嚥下(えんげ)が難しくなっている方も飲み込みやすくするためです。料理人をしていたときも、おいしさは追求してきたのですが、食べやすさという視点はいまほどなかったですね。ミキサー食というのも働いてから知りました。


メディカル給食だからこその視点ですね。
それはありますね。ミキサー食は惣菜をミキサーで細かくしていくわけですけど、料理人として見栄えにもこだわりたかったので、取引先様の料理施設でサテライトキッチン担当を務めていたときは、食材ごとにミキサーにかけて彩りよく盛り付けることも心がけていました。

見た目にもおいしくということですね!
もちろんです。また、浅田給食にはプリン食と呼ばれる細かくした食材をゼリー状に固める食事形態も提供しています。これは、ただ固めるだけでなく、たとえば焼き鮭なら焼き鮭の型に入れて固めることで食べやすさと見た目の良さを両立した調理法になっています。

すごい!技術の進歩を感じます。時代が進むごとに変わってきているのでしょうか?
ずいぶん変わりましたよ。これまでできあがったものをパック詰めしていた煮物も、いまでは事前に調理をせずに、あらかじめ具材とだし汁を真空パックに詰めてから加熱しています。真空調理という調理法なのですが、真空状態にすると浸透圧の関係で味が染みやすくなるんです。しかも煮崩れがないので、お客様にも大変ご好評をいただいています。鶏の照り焼きも、焼いたお肉とたれをパッキングすると味がしっかりつきますね。


いろいろと工夫されているんですね。
そこが面白さでもあります。私が入社したタイミングでスチームコンベクションオーブンが日本に入ってきたのですが、その機械を使った調理法を考えるのも楽しいですよ。当初は蒸し料理しかできないなんて言われていましたが、実はやり方次第で煮物も炒め物もできるんです。炒め物は大量調理に向かない料理で、大釜いっぱいに野菜を入れてかき混ぜると、水分がたくさん出てきて釜の底が水浸しになってしまいます。オーブンで調理が可能になったことで、提供できる料理の幅も広がりました。

非常に興味深いお話しをありがとうございます。そういった調理法は、どのように勉強されているのですか?
自分で考えるのもそうですし、メーカー主催のセミナーに参加したり、ネットで情報を調べたりもしています。そうして、実験を重ねてうまくいったものや学んだ知識を社内で共有しています。

四六時中にわたって料理のことを考えていらっしゃるのですね。ご自宅でも料理をされますか?
そうですね、子どものためにハンバーグやとんかつなんかをつくっています。子どもが小さいときは、「今日のごはんはなに?」がただいまの代わりの挨拶だったんですよ(笑)


ほほえましい話ですね!会社でも家でも料理をされるとなると、逆になにをして気分転換をされているのでしょうか?
昔からバイクに乗るのが好きで、時間があればツーリングをしています。それに、個人経営のときと比べたら自分の時間もグッと増えたので、勤務後にジムに通うようになりました!

おぉ、お元気ですね!では、最後に今後の目標を教えてください。
セントラルキッチンでつくったものが、現場調理と変わらない味になるように努力しています。出荷した惣菜は再加熱されるものもあるため、そこで完成するように仕上げ過ぎない加減を考えることが大事です。また、嚥下が悪くなっている方にもっとおいしい食事を提供できるように新しい形態の開発にも取り組んでいて、いまも酵素や圧力を利用して食材をやわらかくできないか実験を繰り返しています。だれかが喜んでいる姿を想像しながら試行錯誤するのは、本当に楽しいものです。


取材日:2024年10月